レオンはマチルダに何を残し、何を得たか -映画「レオン」で学ぶ民事信託
今回は、映画「レオン」を通して、民事信託についてご説明したいと思います。
映画「レオン」で描かれるシーン
映画「レオン」には、次のようなシーンがあります。
レオンがトニー(マフィアの元締めでレストラン店主)に、「自分に何かあったら、預けてあるお金をマチルダに渡して欲しい」と伝えるシーン。
LEON:
Her name is Mathilda.
If anything happens to me, I… I’d like you to give her… my money.
それから、トニーがマチルダに、レオンから言われていたことを実現する時が来たこととその方法を告げるシーン。
TONY: [with bruises inhis face] Leon asked my to helpyou out if.. if something happened. And I think something happened, right? He put on the side a little cash for you. So, what I’m suggesting is that ah,seeing as how you are still so young, I should hold the money for you, youknow, ’till you’re older. Like a bank, you know, except that it’s better than abank, because, you know, banks get always knocked off. No one knocks off oldTony. But it’s.. it’s your money, and in the meantime all you gotta do is comehere every once in a while, and I’ll dish it out so that you can have a littlefun, okay?
トニーは、レオンから預かっているお金をマチルダに一括では渡しませんでした。
マチルダがまだ幼く、財産管理能力が充分でないことから、たまに来たら少しずつ渡す、ということにしたのでした。
さて、 映画「レオン」のようなことを実際に行いたい場合は、どうすればよいでしょうか?
例えば、未成年の子の唯一の親権者であって、健康に不安がある方等にとっては、切実な問題かもしれません。
この場合、信託(民事信託)という制度を利用することで、同様のことを実現することができます。
信託の制度とは?
信託とは、次の図のような関係となる制度です。
委託者が、遺言等によって、信頼できる人(受託者)に対して財産を移転し、受託者は一定の目的(信託の目的)に従って、利益を受ける人(受益者)のためにその財産の管理・処分等をする制度です。
未成年の子の唯一の親権者であって健康に不安がある方が利用する場合の例
未成年の子の唯一の親権者であって健康に不安がある方が、信託を利用する場合の例としては、次のようなものが考えられます。
・当事者
当事者は次のようになります。
・委託者:未成年の子の唯一の親権者であって健康に不安がある方
・受託者:委託者にとって信頼できる方
・受益者:委託者の未成年の子
なお、司法書士が受託者になることができれば話は簡単なのですが、信託業法上難しいようなので、信頼できる方(親族の方など)を選んでいただきます。
そして、別途、信託監督人または受益者代理人として司法書士を選任し、信託が適切に運営されるよう監督させるのが良いと思います。
・信託の目的
信託の目的・信託条項として、次のようなことを規定します。
・「受益者が成人になるまで」のような期間
・「期間が満了したら受益者に残余財産を帰属させる」旨
・生活費の支給額または支給額の算定方法
・方式
遺言書によって信託を設定します(遺言信託)。
まとめ
レオンはマチルダに、適切に管理される財産を残しました。
他方で、レオンは、自分が亡くなってもマチルダが苦労しないですむだろうという安心を得たのだと思います。
トニーは信頼できないという見方もあるかと思いますが・・・
さて、信託は、上記の他にも、柔軟な制度設計で希望を幅広く実現することができる制度です。皆様からのお問い合わせをお待ちしております。
gad
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