登記簿のビッグデータ的活用と個人情報
最近、登記された情報を元にした情報提供をするサービスがちらほらと見られるようになりました。
・不動産登記簿Manager
http://touhon-manager.annex-homes.jp/index.html
・『HOME’S』、登記簿謄本をWEB上でスピーディーに確認できる「不動産登記簿Manager」を提供開始
http://www.sankeibiz.jp/business/news/140218/prl1402181508059-n1.htm
・登記簿図書館プロ
http://登記簿図書館プロ.com/
・登記情報をデータベース化 所有者名や住所で検索 情報通信ネットワーク http://www.asahi.com/and_M/living/jutaku-s/JSN201402190003.html
ともに、一般財団法人民事法務協会による「登記情報提供サービス」にて有料で公開されている登記情報等から情報を抽出し、編集・加工するなどして独自の価値を付けたものを有料で提供する、というサービスのようです。
例えば、相続による所有権移転登記があればお知らせしてくれたり(相続による所有権移転登記がされた不動産は、近く売却されるものが少なくない)、担保目的の不動産を検索したい場合に、所有者名で名寄せをしてくれたり、といったことができるようですから、不動産会社や金融機関にとっては魅力的なサービスとなるかもしれません。登記簿をビッグデータとして活用する時代の到来です。
ところで、登記簿には不動産所有者や会社代表者の住所・氏名、住宅ローンの債権額、差押登記の有無といった、個人情報が満載です。上記のようなサービスでは、これらの情報が編集・加工されて第三者に提供されるわけです。そうすると、このようなサービスと、個人情報保護法との関係が気になってきます。
個人情報保護法によりますと、オプトアウトという仕組みの活用により、本人の同意を得ることなく、個人情報を第三者に提供することができるようです。したがって、上記のようなサービスも、一定の要件を満たす限り、個人情報保護法上問題ない、ということになるのでしょう。
・Q5-15 オプトアウトとは、どのような仕組みですか。(消費者庁) http://www.caa.go.jp/seikatsu/kojin/gimon-kaitou.html#5_15
・「個人を特定する情報が個人情報である」と信じているすべての方へ http://enterprisezine.jp/iti/detail/5752
個人情報保護法って、意外と頼りないのですね。威力30、守備+20、魔防+10、さらに間接攻撃可能、というスペックで相当手強いと思わせておいて、重さが20のために身動きが取れず、「てつの剣」にあっさりやられる聖斧「スワンチカ」に似ています。もちろん、「ファイアーエムブレム 聖戦の系譜」の話です。
・ファイアーエムブレム大辞典まとめWiki
http://www23.atwiki.jp/fedaijiten/pages/561.html
さて、個人情報保護法に期待できないとなると、「そもそも個人情報が満載である登記簿が広く一般に公開されていることが問題なのであって、登記簿の公開範囲や登記事項を見直すべきだ」というようなご意見も出てきそうです。
しかし、そのような考え方は、スワンチカの重さ20という設定を変更するのではなく、システムから重さのパラメータ自体を廃止する、ということをしてしまったためにゲーム性が著しく損なわれた「ファイアーエムブレム 覚醒」の発想と同じではないでしょうか。「本当にこれで良かったのか・・・」(ブリアン)となりかねません。
登記簿の公開範囲や、登記事項の見直しといったことは、DV被害者等の住所変更登記の省略(PDF)のように、その必要性が高い場合に限られるべきで、過度な見直しにより、取引の安全と円滑に支障をきたすようではいけないと思うのです。
登記簿のビッグデータ的活用が将来もっと広がりを見せたときに、登記簿に注目が集まることで、登記制度の過度な見直し、といった方向に向かわないか心配です。
スワンチカのくだりは、いらなかったですかね。
gad
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